妄想劇。山崎まさよし+スガシカオ、生カラオケな夜に。

2016年5月25日

「金曜やし、ええやん」と日付が変わる少し前の呼び出し。
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週末までに二曲書かないとアルバム制作に躓くと、ランチの誘いを断ったくせに。
埋め合わせのつもり? タクシー代も払わせてやるんだから。

移動距離が長く、車内でウトウトしはじめたところで到着。横田基地のある福生。
ライトアップされた壁の色が夜目にまぶしい。ひまわり色した雰囲気たっぷりのアメリカンハウスは、カラオケルームにおさまらず、カラオケハウスだ。

去年初めて連れられて、私がいたく気に入った場所。「おお、着いたかあ。まあ飲め飲め」と、電話をしてきた張本人──山崎まさよし。立食パーティーと見間違えるほど、ガヤガヤ、ザワザワ。関係者で溢れかえっている。カウンターのスツール、まさやんの左隣が空けられて、ぽんと座面を叩く。
口端にくわえマルボロの、煙が目にしみるようで顔をしかめた。
う、渋い。私の好きな顔。あっさり機嫌が直る。そして聞かずとも分かった、納得のいく曲が書け、前祝いなんだと。

「あ〜ヤマ。みんなうるせえんだけど、やれやれって」と現れたのはスガシカオ。
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ふ、と私にも気づいて「おぇ〜い」とハイタッチを求められた。ご無沙汰してます。

「マスター、曲シャッフルで入れたって」とまさやんがカウンターの奥に頼むと、「おっっまえ、さあ!機械に任すんなら、俺わざわざ言いに来る? え? 俺ガキの使い?」「ぬはははっ」と大口開けて、呆れた、わざとだ。

「キタローさん潰れる前に、カラオケ、生でやってよ。あそこら辺うるっさいから、黙らせてやれ」とスガさんが指さす一帯から、ひゃあああ!、と嬌声。
うっとおしいって顔してるけど、右手もうマイク持ってる、この方。
するとまさやん、ロックの焼酎をぐいっとあおると、パン、パン、パン、パパパン、パンと乾いた手拍子。

スツールを離れ、ステージへ歩きながらスニーカーのソールをタップのように鳴らす。

あ、ストンプ。さすが10代にドラムをやってただけあって、足音がダンサブルなリズムへと移り変わる。そこにスガさんがスキャット。すごいすごい、体から鳴る音だけでセッションが始まった。

みんなの興奮が地鳴りとなって沸き上がる。二人がステージに上がる。するとパーカスのゲンタさん、ベースのキタローさんも加わる。
ミュージシャンに生カラオケ無理でしょ、普通にライブになっちゃう。スガさんが事務所出て、黄金のコラボ、今宵限りの再結成。感動で目頭がじゅんと熱い。
ところがゆっくり鑑賞させてもらえない。まさやんが私に手招き。嘘でしょ? 

プロに混じってド素人が。人の波がミュージシャンらの盛り上げに酔わされて、私を煽りにくる。……知らないからね。意を決してステージに上がると、「ようきたあ」とまさやんからハグ。

酒くさい、煙草くさい、そして何もしてないのにこの人自身からは、日なたの匂いが立ちのぼる。
そしてぼそりと、「昼間悪かったな。今日中なんとしても仕事終わらせたかったし」と、まさやん。

この人のしっとりした低音、鼓膜にとてもくすぐったい。そして追いかけるように、「ありがとう、またよろしく。今日で俺ら、出会って何年?」と、飾らない言葉で私たちの記念日を祝ってくれた。

うん、忘れちゃった。「あかんやろ、それ」と苦笑いのまさやん。

だってもう指折り数える必要もない、一生一緒だから。私とまさやんの、左手薬指もそう言っている。「ほおら! ヤマ!!  いちゃいちゃはあとっっっ!」と錆びたナイフのような声が向けられた。ねえ言うこと聞いてあげないと、スガさんの血管が切れちゃうよ。